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LA BUONA VITA 宮崎里恵のおいしい出会い
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LA BUONA VITA 宮崎里恵のおいしい出会い

第4話 遊び? 実験? 楽しむことから始める子ども料理教室

毎日、口にしている食物はどういう所で育ち、どのような栄養価があるのか。作ること・食べることを楽しみながら、普段は無意識に食べている食物のことを意識してもらおう! という意図の下に行われた子ども料理教室。しかし、遊び盛りの子どもたちにとっては、学びの場というよりも実験ができる新しい遊び場と化していた。

今回の3日間コースでは、五感を使って味わうことを覚えてもらうために、私たち日本人に親しみ深い「米」と「小麦」に着目した味覚教室を開催。1日目は、ピタパンを焼いて3種のカレーパーティー。2日目は、赤米や黒米などいろいろな米の違いを学びながらのおにぎり作り。そして取材当日の3日目は、生地から作るピザに挑戦!
ピザ作りは、まず生地を練り発酵させることから始まった。「なぜ、生地は膨らむのでしょう?」時折、宮崎先生が発する質問に、大きな声が八方から飛び交う。「イースト菌!」「酵母菌がぬるま湯を飲んで、小麦粉のでんぷんを食べて、二酸化炭素を吐き出すから」。間髪いれない回答に、先生も「そう、正解!」と感心の様子。 1日目の教室で教わったことをきちんと覚えている子どもたちは、なかなか優秀だ。この答え方でお分かりだろうか、この日は小学2年生から中学1年生までが参加していた。

生地を寝かせている間にトッピング用の具を準備する。たまねぎ、ピーマン、きのこ、ウインナー、サラミ、パイナップル etc…、そして乳牛と水牛の2種類のモッツァレラチーズ。白くて柔らかそうな見た目には差がないが、試しに一口食べてみると味は随分違う。皆に感想を聞く必要はなかった。味見は1つずつと言われたのに、コクがあり塩味が効いた水牛のチーズには、どこからともなく小さな手がニュッと伸びてくる。周りの目を気にしないで行動できる若さがうらやましいッ!
家ではほとんど包丁を持たない子どもたちの慎重な手つきに、思わず懐かしさがこみ上げてくる。自分にも覚えがあるが、子どもの時分は野菜を洗うだけでも異常なほどに気を使い、包丁で切るときには長さや角度をそろえないと気が済まない。次第に、大きさはバラバラでも大して問題ないことを知るのだが、今はまだ経験途中のキッズたちは、とても丁寧な仕事をしてくれている。
丁寧すぎて時間がかかるから、子どものお手伝いを断るお母さん方も多いだろうが、興味を抱いたときは成長のチャンスである、ぜひキッチンに立たせてあげてほしい。そうすればもっと料理好きになっていたはずだ…と、台所を追われた私は感じている。

子どものペースに合わせ、切り口の角度にまでこだわった作業を楽しんだあとは、いよいよ生地伸ばし開始! 粘土遊びのような成形作業中は、さすがの元気印たちも口数が減る。夢中になりすぎて、手にふわりと気持ちいいポワポワの生地は、いつしか薄〜いピザ台へと変貌を遂げていた。ある程度の厚みを残した方がおいしいことは、この1時間後に気づくこととなる。
ところで、宮崎先生はなぜ子どものための料理教室を開こうと思ったのですか? という問いかけには、このような答えが返ってきた。「今、世界中の国々で『食』を見直す運動が広まっています。イタリア発信の『スローフード』、アメリカ発信の『ロハス』、そして日本発信の『食育』。次世代を担う子どもたちには、氾濫する情報の中から正しい情報を見分け、自分で食を選択できる力(=食選力)を身に付けられるようになってほしいと考えたからです」

食選力を備えるのは大人にとっても難しく感じるが、視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚の五感すべてを使って味わえれば自然に身に付いていくと先生は言う。つまり、五感を使う訓練が必要というわけだ。「どのように五感を訓練し、感心を持たせるかという教育が味覚教育でしょうか」

そういえば、食材を手にした子どもたちはすぐに匂いをかいでいた。好奇心がそうさせるのか、無意識のうちに動いているようだった。その様子を見て、この年頃なら五感を使った味わい方が簡単に身に付くのだろうと納得した。それを意識的に行うには、自ら料理をすることが手っ取り早いというわけだ。
ピザ作りは順調に進み、具のトッピングに入る。ピザ台にソースを塗り、思い思いの具材を載せていく。宅配ピザのイメージが強いのか、トマトソースにサラミや野菜、チーズを組み合わせたピザが目立つが、好き嫌いはハッキリとしているようだ。ピーマンの人気は低く、ゴルゴンゾーラチーズに至っては気の毒なほどである。
気づくと、作業の途中で数人が消えていた。どこに行ったのか捜してみたら、キッチンの床に座り込み大きなボウルに入った粉をこねているではないか。「何をしているの?」のぞき込む私に、一心に粉をこねていた少年は「白玉作り」と返事をしてくれた。横でボールを支える少年少女たちの声とハモリながら。

白玉はもち米の粉で作る。「ピザ生地と比べてどう?」と尋ねると、「小麦粉の生地は弾力があるけど、お米の粉は水を入れたらベタベタになって、粉を増やしてこねたらフワフワになった」という感想を聞かせてくれた。ところが、ゆでた団子の食感となると、「白玉はすごく弾力があって、小麦粉で作る団子の方がモチモチして柔らかい」と変化する。この感覚は、体感してこそのものだろう。
やがて焼き上がったピザは、色鮮やかでなかなかの出来! フルーツ白玉クリームも、お代わり続出の大好評だった。一つ意外だったのは、宮崎先生のマイブームだというバジルソースに茹でじゃがいもをトッピングしたピザが人気だったこと。見た目で敬遠していたのだろう、子どもたちは誰一人使おうとしなかったバジルソースのおいしさを知ったようだ。1枚しかなかったそのピザはあっという間に売り切れ、私の口には入らなかったのが悔やまれた。
「食べることは楽しいこと」。これは多くの人々に共通する思いだろう。そして、食とは読んで字のごとく「人」に「良い」ものでなければならないはずだ。頭では分かっていてもなかなか実践できない「体にいい食事」をとるためにも、少しずつ経験を重ねていくことの大切さを実感した料理教室だった。

スローフードの普及に携わり、食育インストラクターの資格を持つ宮崎先生は、「食選力」を養うために、これからも子どもを対象にした料理教室を開催していく予定である。
取材・文 三枝真理(SAIGUSA Mari)
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