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LA BUONA VITA 宮崎里恵のおいしい出会い
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LA BUONA VITA 宮崎里恵のおいしい出会い

第5話 その場で食べるだけじゃ、もったいない!旅の味覚を食卓へ

「お赤飯をご馳走するから、うちへ食べに来ませんか?」
そう連絡を受けて、スキップしながら宮崎先生宅を訪問すると、テーブルの上には大きなお櫃に入ったほかほかの赤飯と、きれいに盛り付けられた煮しめ、そして細いのにゴツゴツしたとうもろこしが並んでいた。どれも北海道で購入してきた食材だという。

「先生、北海道へ旅行に行ったのですか?」
「そうなのよ。牧場や農場を回って、雄大な自然を満喫してきたわ」
行楽シーズンの秋には、日本各地へ旅行した方も多いだろうが、宮崎先生も北の大地を満喫してきた。そしてもちろん、ご当地のおいしい料理を食べまくり、そのうえ東京では見かけない食材に出会ったら即、購入してきたそうだ。早速、旅の思い出話を聞きながら舌鼓を打っていたら、あっという間にベルトを緩める事態に……。
「このとうもろこしの形、面白いですね。粒が2列ずつ並んでいて、全部で8列。歯抜けになっている列は、誰かがつまみ食いしたとか?」
「これは『八列とうもろこし』と言って、とうもろこしが初めて日本に入ってきた明治初頭の品種らしいのよね。 その後、昭和になって入ってきたハニーバンダムやピーターコーンが主流になり一時期途絶えていたそうだけど、種を保存していた農家がまた作り始めているのですって。 もちろん最初から8列で、つまみ食いはしていないわよ」

ひょろっと細長いのに、大粒でゴツゴツした見た目からして、野性味あふれるとうもろこし。味のほうは、“THE穀物”といった感じで、甘いとうもろこしに慣れた私には「これがとうもろこし? 味はあまりしないな」という印象だった。お年寄りにとっては非常に懐かしい味のようで、「これじゃないと、とうもろこしを食べた気がしない」と言う人もいるらしいが、一般には流通はしていないから昔を知らない世代には珍しいだろう。
  流通していない理由は、生産量が非常に少ないうえ、日持ちしないため。それなのに、どうして東京の宮崎先生宅で食べられたかというと、買ってきてからすぐに茹でて冷凍保存していたからだ。生産者から直接聞いた保存方法のおかげで、私の口までやって来た八列とうもろこし。地元の人に話を聞くことで、旅先で出会った珍しい食材もさらに身近になるというわけだ。

これからも食べ続けたいかどうかはさて置き、初めて出会ったとうもろこしの存在はなかなか面白いものだった。一生知らずにいたかもしれない食材を知って、その歴史を垣間見て、何だか得をしたような気さえする。食べ終わった芯の断面がまるで四葉のように見えたのも、ご機嫌気分に一役買ってくれていた。

一緒に見せてもらった上下がとんがったかぼちゃも、日本に伝わってきた頃の味を伝えているらしい。まさかりを使わないと切れないほど皮が硬いそうで、その名も「まさかりかぼちゃ」。硬すぎる皮ゆえに敬遠され、扱いやすい品種へと座を譲ったようだ。
秋に収穫するかぼちゃは、丸のまま保存するなら中身が熟す2カ月後くらいが食べ頃で、皮の硬いまさかりかぼちゃは3カ月後あたりが食べ頃になるという。かぼちゃがそれほど長く保存できることを知ったのは勉強になったが、まだ食べ頃ではないために、今回は残念ながらお相伴にはあずかれなかった。

郷土料理や土地の名物を食べる楽しさは、旅気分を盛り上げる大きな要素となっている。レストランで、屋台で、鄙びた食堂で味わう料理は、なぜか非常においしく感じてしまう。都市部では各地の料理が食べられるし、産地からのお取り寄せも盛んになっているが、旅先での食事と明らかに異なるのは、気分である。異郷で見た景色、感じた風、イタイ体験などが気分を盛り上げるのだ。
分析はさて置き、旅先での味覚はその場限りではない。いまや日本各地にある「道の駅」や、農家の直売所などに立ち寄って、その土地ならではの食材を求めてみるのもいいだろう。材料を買い求めて、自宅で調理する。普段とは少し違う食材で作った料理には、旅の思い出がぎっしり詰まっていて、きっとおいしさもUPしているはずだから。
北海道の小豆が入ったお赤飯もおいしく、思わず食べ過ぎてしまった。いろいろな野菜を使ったお煮しめは、正月に向けての参考にもなった。火の通り方や性格の似た具材を小分けに炊く煮しめと、一度に炊く筑前煮は似て非なるものだそうだ。節句に作る煮物は煮しめだということを学んだので、大雑把な私も節句には煮しめを作ろうと思っている。
取材・文 三枝真理(SAIGUSA Mari)
 
<調理法>
*まず、昆布と干し椎茸をそれぞれ水で戻す。戻した素材は具に、戻し汁はだしとして使う。
鍋1 結び昆布、椎茸を昆布だし、椎茸だし、酒で煮る。途中で手綱こんにゃく、砂糖、醤油、みりんを加えて煮詰める。
鍋2 鍋1の煮汁を一部とって調味料と昆布だしを適宜足し、がんもどき、焼き豆腐を煮る。
鍋3 鍋2の煮汁を一部とって調味料と昆布だしを適宜足し、里芋とれんこんを煮る。
鍋4 昆布だし、砂糖、梅干でにんじんを煮る。火を止めた後、煮汁に茹でたいんげんを浸す
鍋5 ごぼうを下茹でし、その茹で汁に酒、砂糖、醤油を加え煮る。
※鍋1〜3の素材は昆布と椎茸のだしで煮る。鍋4は昆布だしのみを使い、梅干し風味であっさりと仕上げる。ごぼうは個性が強いので、ごぼう自身の風味を生かして煮る。
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